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『10歳のキモチ』エピローグより、一部抜粋―――(インタビュアー・河合香織)
原宿駅の道路わきで、美山加恋は笑顔で力強く手を振っている。
私は、過ぎ去るタクシーの後部ガラスから後ろを振り返った。彼女はまだ手を振っている。
結局、車が見えなくなるまで振り続けていた。
そのとき、私はそれを彼女のプロ根性だと思った。子どもであれ、プロとして第一線で仕事
をしていく上では、そういう他人への気配りが欠かせないのだろうと……。大人への配慮に長け
た子ども、最初の出会いで私の目にはそう映った。
美山加恋へのインタビューは、八月の猛暑のスタジオに始まり、早稲田の戸山公園、秋の高尾
山でのハイキング、年の瀬に彼女の地元で、と場所を変えて行ってきた。大人のように深遠なこ
とを言ったかと思ったら、無邪気な子どもらしい顔を見せる。折り紙を教えてくれたり、似顔絵
を書いてくれたりもした。その間に、九歳だった彼女は、十歳になっていた。
私は、十歳の少女にまつわる事件を数年間取材してきていた。その少女は、連れ去り事件に巻
き込まれた被害者とされた。しかし同時に、自ら連れ去り犯と行動することを望んで、すべての
持ち金の管理も少女がしていた。保護されたとき、「家には帰りたくない」と言ったという。家
にも学校にもどこにも居場所がないからこそ、中年男性とともに行動をしたように思われた。
最近は、小学生の自殺も相次いでいる。今まで私は十歳というのはまだ子どもだと思ってい
た。だが、現在、十歳というのはどういう年なのだろうか。
少年は十四歳が変わり目になりやすいと言われたが、少女の場合は、身体的にも子どもから
女性に一歩足を踏み入れ始める年齢である十歳、十一歳あたりが岐路になりやすい。その年をどう
過ごしたのかは、将来をも左右する重要なものとなるのだろう。
そういう時期を、美山加恋はどんなふうに過ごしたか。私はその成長をテレビ画面や取材を通し
て見つめてきた。もっと天才的な女優はいるだろう。もっと整った容姿の少女もいる。なぜ彼女が国民的に人気を
獲得しているのだろうか。彼女の最大の魅力は、その普通さにある。収入があるのにも関わらず、
十歳だからお小遣いは一か月千円。言葉遣いや考え方、まさにどこでもいる十歳の少女である。
もちろん芸能人という、普通とはいいがたい職業についている。十歳で仕事をしていていること
自体、特殊なことである。一緒に仕事をした大人が絶賛しているような普通ではない忍耐力やプロ
意識、才能も兼ね備えている。人よりも何十倍努力もしているだろう。
だが、美山の常識を逸脱しない普通さは安心感を呼ぶ。画面の向こう側にいても、近所にいる少女
のように気さくに有り続けている。それは素顔もそうだ。作り物ではない、普通の感覚を持っている
からこそ、彼女が愛されるのだ――――。
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